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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

SDGsを事業開発に活かす

 SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))がヒートアップしています。自治体や学校に留まらず、様々な企業で専門の部署を立ち上げたりされています。今週飲食店の経営グループがSDGs関連の経営支援会社を設立したというニュースがありました。

https://www.value-press.com/pressrelease/244564

 

 飲食店でも積極的にSDG’sに取り組まれているようですね。コロナ禍の影響で多くの飲食店が経営難の状況にありますが、新たな事業強化の切り口としてSDG‘s が生かされると良いと思います。

 

 SDGsについて、ご存じない方もいるかもしれないので、念のため定義をレビューします。SDGs(エスディージーズ:Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の次の施策として、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な世界を実現するための国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成され、2030年を達成期限に設定されています。

 

 企業は、このSDGsとどのように向き合っていけばよいのでしょうか。

 

 SDGsは、企業のプレゼンスを上げる一つのチャンスです。SDGsのゴールやターゲットを自社の事業に照らし合わせて、企業の姿勢や考え方、想いを言葉として対外的に発信することができるからです。これは企業にとって、事業価値を再定義する行為です。

 

 ある寝具販売店では、いくつかの種類の枕や布団、ベッドを販売していました。10年ほど前に業績が低下した時、事業の見直しを行いました。その頃は、商品の寝具をいくつか並べて、価格や寝心地を訴求する程度でした。

 

 しかし、それでは大手の量販店に勝てないということで、寝る時や睡眠時の悩みを聞くコーナーを設けて、店員に案内してもらいました。それがきっかけで、睡眠コンシェルジェという新しい職種ができ、今では一人ひとりの睡眠問題を問診し、最もフィットする商品の提案を行っています。

 

 これは小売店の売り方がモノ売りからコト売りに変わった事例です。SDGsはこの一歩先を行くという認識です。SDGsの目標の3つ目に、「すべての人に健康と福祉を」というゴールがあります。また、そのターゲットが9つのターゲットがあります。例えば、乳児の死亡率低下や若年層における自殺率の低下がターゲットに掲げられています。

 

 乳児の場合は、乳幼児突然死症候群(SIDS)が問題視されており、乳児期の死亡原因としては第4位になっています。また、自殺者数は年々減少傾向にありますが、海外と比較し日本は高い傾向にあります。

 

 乳幼児突然死症候群の場合、確証はないのですが現段階ではうつぶせに寝かせない方が良いとされています。赤ちゃんが寝がえりをうって、うつ伏せになりにくい構造のベビーベッドや枕の企画は乳児死亡率の低下に間接的ではありますが、繋げられます。

 

 また、自殺の背景としてうつ病が大きく影響しています。うつ病経験者に聞くと、多くのケースで不眠症が併発しています。睡眠導入剤をずっと飲み続けているという話も聞きます。睡眠は生き生きと健康に生活するための必要不可欠な要素です。それを欠いてしまうことにより症状が悪化するリスクを寝具の商品で低減することができれば、それは立派なSDGsへの貢献と言えるでしょう。

 

 この過程を読んで頂いて、気づかれたかもしれませんが、SDGsは単純に企業のPRやプロモーションの方策ではなく、事業の高度化につなげることができます。今まで小売販売が中心だった企業がPB商品を企画販売するチャンスです。また、SDGsでターゲットとなっている層との顧客接点を作ったり、それがきっかけで新たなチャネル開発につなげることもできます。

 

 また、SDGsのゴールには複数のフィールドが存在します。健康だけでなく、女性社員が多いのであれば「5. ジェンダー平等を実現しよう」に挑戦することも可能です。さらに、バリューチェーンにも着目してみると、さらに幅が広がります。使用後の寝具素材の有効活用などメーカーと協力することで、地球環境などより大きな視点での取り組みを推進することも可能です。複数のフィールドに取り組むことで、その会社の独自性は高まります。

 

 プロジェクトを上手く進めるためには、内容も大切ですが、検討の仕方も重要です。視座の持ち方でちょっとした改善から抜本的な改革に変わるからです。現状の積み上げで考える方法と未来を描きそこから考えるやり方があります。

 

 SDGsの取り組みでは、商品ではなくシーン、シーンではなくライフスタイル・地域社会の景色に着眼することが求められている以上、未来の生活や社会、地球環境がどう変わるのか、周りの映像から考えることが効果的です。写真でも良いですし、絵でもよいですし、粘土で作っても良いです。未来の映像を皆で想像していく機会があると良いですね。

 

 皆さんの会社ではSDGsについてどのような議論がされていますか?

 多くの企業が持続可能な社会の実現に参画することで、

 2030年への理想が現実のものとなることを願います。