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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

ビジョンづくりを人材育成に活かす

以前の記事で、ビジョンとは会社の業績目標を達成するための根拠となるもの、顧客にその事業の意義を理解してもらうためのものという話を書きました。今日は、もう一つの活用方法をご紹介します。

 

本日の題にもありますが、”人材育成に活かす”ことです。

 

ビジョンは創る過程と実行する過程があります。何のためにやるのか、何のためにやっているのかということを社員やお客様に理解してももらうことが目的であれば、社長が創り、社員やお客様に根気強く語っていけば良いでしょう。

 

一方で、人を育てたい、特に今後幹部になっていく人を育てたいといった場合には、ビジョンを創る過程を大切にすることを勧めます。ビジョンを創るプロセスそのものが次世代経営幹部の学習の場になり、成長の機会になるからです。

 

ビジョンづくりを通した人材育成には、3つのメリットがあると考えています。

①視座が変わる

次世代幹部の多くは、営業や生産、管理といった部門のリーダーを担っています。部門のリーダーの目線は、営業であればいかに売り上げを上げるか、生産であればいかに稼働率を上げるか、管理であればいかに売掛や買掛サイトを改善するかといった、部門の役割にいきがちです。

一方で、ビジョンは会社の事業全体について考える必要があります。また、取り扱い商品やサービスのみならず、組織や職場のことも考える必要があります。「自分たちの大切な環境を丸ごと育てていく」そのために何をするのか?を考え、仲間と議論するのです。必然的に部分ではなく全体を視る目が育ちます。

 

②リーダーの結束

昨今人材育成の方法は多様化しています。外部研修やセミナーだけでなく、SNSや動画を活用した知識習得、同職種を集めた学校形式プログラムなどが挙げられます。それぞれにメリットがありますが、リーダー同士の結束力を高めるという点においては、ビジョンづくりが有効です。

ビジョンづくりでは構想を考えるだけではなく、現状分析をして問題や課題を整理します。社内や取引先の声も聞きながら、見えていない課題も議論をすることにより深めていきます。異なる経験や立場の人間が意見交換を行いながら、一つの方向性にすり合わせをしていく。そして、具体的な行動プランに落とし込むまでにたくさんの対話を行います。このやり取りが相互理解を深め、いざという局面に助け合える関係形成へとつながります。

 

③伝道師をつくる

 社長が一人で創り、社員全員に理解を求めようとすると、まず、各部門のリーダーに理解してもらわなければなりません。人は直接関わったことがない人、距離のある人のいうことにはなかなか、当事者意識を持てないものです。

この人が言うなら頑張ろうかと思えるのは、その人が部下に対して貢献や手助けをした経験があるからです。各部門リーダーがビジョンづくりを行うケースでは、ビジョンが出来た時点で3~4名の伝道師が誕生します。

1人の部長が2人の課長に、2人の課長が3人の担当にビジョンの意義や内容、具体的な行動計画を伝えることによって、メッセージが社員に届きやすくなり、リーダーや社員の伝える力も養われます。

 

3つのメリット

①視座が変わる ②リーダーの結束 ③伝道師をつくる

 

経営戦略、営業戦略、マーケティング経理・財務など、知見を習得する方法は世の中にたくさんあります。動画などで理論を事前予習した上でビジョンづくりに臨むこともできます。一方で、上記3つのメリットは、リーダーの主体性を発揮してもらうことにつながります。

 

働き方改革で時間の選択と集中が迫られる昨今、リーダーや社員が集まらないとできないこと、お勉強ではなく経営そのもの、人間力という見えない力を育てる。こういった隙間時間や一人ではできないことに時間と資源を投入することで、効率的且つ効果的な人材育成ができるのではないでしょうか。