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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

経済界における女性活躍推進の現状と課題

 2014年、安倍政権下で政府は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」という目標を掲げていました。その達成状況は目標からほど遠く、2019年末の時点で女性管理職比率は17%です。帝国データバンクが実施した以下の調査では、女性管理職が30%に達成している企業は全体の7.5%に留まっています。そして政府はこの目標を2030年までに先送りしました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000155.000043465.html

 

 そもそもなぜ女性管理職の比率を上げる必要があるのか?他国と比較して?労働力不足の問題?色々な捉え方がありますが、私の個人的捉え方は、衣食住や社会機能の多くを企業は開発提供している中で、その意思決定をする層が男性に偏っていて良いのかという問題意識です。この地球上には、男性と女性(トランスジェンダーを含める)が約半々いる中で、物事の意思決定が男性中心に行われていくことに対して危機意識を持ちます。

 

 一方で、消費者の半数は女性であるため、その利用者である女性の意見を聞いて開発までできれば、事業の意思決定側に女性がいなくても良いのではないか?という意見も聞きます。その考えは理解できなくもありません。ただ、色々な意見は聞くが最終的に、ユーザーの潜在的ニーズにリーチしないのであれば本末転倒です。

 

 この場合、消費者側が声を上げなければ、ユーザー側が我慢することになり、個人としての女性が本当に必要とする商品サービスは生まれません。こういう状況であるならば、社会的には問題で、意思決定側に女性が入る必要が大いに出てきます。

 

 また、マーケットだけではなく、働く環境や商品サービス開発プロセスに関しても同じことが言えます。意思決定者に女性が少なくても、女性という性にしかない状況やライフイベントに対して理解があり、そういう状況を理解して組織作りがされれば良いでしょう。

 

 また、商品サービスの開発プロセスにもきちんと女性が関わっていき、その内容が意思決定に反映されれば、意思決定者の数はあまり問題ではないかもしれません。ただ、意思決定をするから色々なことは収れんされて決まっていくわけで、その過程に女性が平等に入っていないということは、男性の意見に偏った決定になりかねないというリスクは常にあります。

 

 題名に、「経済界における」という言葉をあえて入れました。女性活躍推進とは経済活動におけるという意味であり、地域や家庭においては、女性は太古の昔から重要な役割を担っており、今更活躍という言葉は表現が合わないからです。地域や家庭も含めたら男女はある意味平等であると思いますが、経済界の中ではまだまだ性差の問題は考える必要がありそうです。

 

 一方で、「個人志向の尊厳」ということに視点を移すと話は全く違ってきます。家事や育児を好まない女性が女性というだけで、家事や育児に完璧さを求められるのは苦痛の何物でもありません。また、管理職として意思決定者として経験を積みたいと考えている人が、そのスキルとは別にライフイベントを理由にその機会を得られないとしたら、それは不平等につながります。「女性だから」「男性だから」という理由で暗黙のプレッシャーを与えるような働きかけは問題だと思いますし、部下側からのアプローチも同じことが言えます。

 

 その中で、最近問題視されていることとして、昇進の意欲と機会があってもジェンダー特有の問題で辞退せざるを得ないということです。出産は以前から取り上げられているテーマですが、それ以外にPMS(月経前症候群)や更年期障害も昇進に影響を与えています。

 

 MEDERI㈱の以下のサイトに掲載されている調査結果では、PMSによる昇進への影響として辞退しようと考えた人の割合は全体の45.5%に及び、更年期障害で昇進を辞退したと回答した人の割合は50%に及びます。(https://mederi.jp) これが明らかに性別特有の問題で、これにより昇進したい人、出来る人ができない状況は、個人にとっても会社の能力活性上ももったいないと思います。

 

 3つ目の着眼点として、「自立への影響」という視点があります。経済界において女性活躍が進んでいないがゆえに、女性、特に既婚女性においては個人の所得が低い傾向にあります。世帯でみれば問題ないという見方もありますが、個人の所得が低いがゆえに、人生において主体的な意思決定ができない(離婚して自立する等)という問題も起きています。

 

 ここで問題なのか、日本の人事制度は現段階でJOB型が一般的ではないため、必要なスキルを身に着けて、すぐに中途として即戦力採用ができにくいのです。どうしても、ブランクが空いてしまうと、派遣や契約社員になりがちで、短期間でスキルを磨いてポストを獲得しにくい構造にあっています。これは、個人の問題もありますが、企業としても実は能力を活かせるかもしれない人材を上手く活用しきれていないもったいない側面があるように思います。

 

 必要なスキルをもっと明らかにしてポスト毎に募集すれば、その分野の管理職ポストも任せられるかもしれませんが、まだまだ総合職ほど年功的な要素や能力や役割での処遇になっており、中途でいきなりポストを獲得することは難しい状況です。これができれば、日本の管理職における女性の比率はもっと上がるかもしれません。

 

 私自身は、ずっと総合職として第一線で働いてきました。小学校の頃から仕事と家庭の両立は目標であり、育児・家事・キャリアとしての仕事を両立できることは、自立的に生きる上で必須と思ってきました。実際には、専業主婦も経験し、私の中では自立的であるために(個人として自由であるために)、仕事は必須という結論に至りました。

 

 実は、今まで生きてきて、性差ということを主張することは、あまり自分自身しっくりきませんでした。今の職種は正直、女性はマイノリティです。ただ、それは、私が鈍感なのかもしれませんが、たまたまそういうもんだとしか思ってきませんでした。

 

 多分私自身、性差よりも一人ひとりの志向の違いに目を向けるタイプだったからかもしれません。ただ、一つだけ大きく感じたことは出産後の仕事のあり方です。ここはジェンダー問題を真正面から感じましたし色々考えました。またブログのいつかの回で自分の経験をもとに何が課題であったか、整理してみたいと思います。

 

 今回は課題中心の記述でしたが、次のブログでは、女性特有の課題を解決するフェムテックに触れてみたいと思います。