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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

鳥・虫・魚☛3つの目の早期育成

 4月からもうすぐ3ヵ月ですね。例年であれば、4月に入社した新入社員も研修が一通り終わったり、本配属されたりする時期ですね。今年はテレワークでスタートした会社もしくは、入社時期をずらした会社も多いと聞きますから、現場での実務に慣れるのはこれからかもしれません。皆様の会社ではいかがでしょうか。

 

 私が新入社員で入った会社は、メーカー系のロジスティクス会社でした。情報システム部に配属された時の最初の仕事は、物流倉庫の現状フローを可視化し、問題点と改善案を10個以上出し、提案書にまとめることでした。そこで、仕事とは問題解決の連続であり、問題とは・・・・という問題解決の基本的なプロセスを体得しました。

 

 私は配属されて早い段階で、複数の異なる着眼点で物事を見る経験をさせて頂きました。物事の見方には様々な考え方がありますが、よく聞く着眼点として「3つの目(鳥の目・虫の目・魚の目)」という視点があります。

 

鳥の目は鳥のように大空から俯瞰的に物事を見ることです。

虫の目は、葉の葉脈の構造まで把握できるように細部まで且つ深く見ることです。

魚の目は、川の流れを体で感じ取るように温度や速さの変化を察知することです。

 

 私が最初に取り組んだ物流の改善業務では、この3つの視点が全て含まれていました。お客様から受発注情報を受託するところから始まり、入出庫や在庫管理、配車など物流フローを可視化することで全体像を掴みました。また、個々の業務のやり方を整理し、細かなルールの背景や理由を明らかにしていくことで、問題を整理しました。さらに、入出荷量や在庫量の推移を可視化し、オペレーション工数の変化も見ていきました。

 

 上記の取り組みにより、重要な課題を浮き彫りにし、その部分を深く掘り下げることで、何が問題なのか、どう変えていくのか、改善の着眼点について適切に焦点を当てるるというプロセスを習得しました。最初に配属された部署が情報システム部門であり、倉庫管理システム(WMS)の設計開発が主な業務であったため、全体像から課題や改善に落とし込む手法を早期にマスターする必要があったのかもしれません。

 

 “入社してから半年間でどのようなことを身につけてもらうのか“ということはよく議論にあがります。スキル以上に物事の見方・考え方が大切であると感じます。ある倉庫会社では、配属されてからすぐに新入社員が担当作業や事務業務を行っていました。いわゆるOJT教育です。その会社では、こんな声が挙がっていました。「自部門の業務のことはよくわかるけれど、自分が関わっている顧客の取引フローはみえず、他部署のことはよくわからない」

 

 実際に、そのことが原因で作業不具合が出たり、部門間連携不足によるミスが発生したりしていました。そこで、入社後の研修で物流に関するフローを説明し、実際に倉庫や通関現場などの見学をプログラムに入れました。全体を俯瞰するような情報を与えた上で、現場の業務に従事するため、自分の担当業務の位置づけや役割が明確になり、業務を円滑に進めることができるようになったということです。

 

 3つの目の着眼点は、通常のルーティンワーク以上に、プロジェクト業務においては必要不可欠だと考えています。3つの目を用いた取り組み方によって成果が左右されるからです。これまでの経験から虫の目→鳥の目→魚の目→虫の目の流れで取り組んでいくと適切な焦点で課題解決ができるのではないかと考えています。

 

 鳥の目で見る前に虫の目でいくつか問題となる細かな事象を捉えておくことで、俯瞰的に物事を見た時に問題の大小の目星がつけやすくなります。いわゆる帰納的に物事をみるプロセスです。ある程度帰納的に事象を見た上で、鳥の目から演繹的に課題を掴んでいくことで、決め打ちではない課題抽出が可能になります。

 

 また、鳥の目で見た後に魚の目でみることにより、変化をみるべきポイントを絞り込みやすくなります。そして最後に虫の目で、変えるべき“ここ”というポイントを定めることにより、ピンボケしない課題解決のプロセスが描けます。

 

 皆さんの会社では、人材育成において、「3つの目(鳥の目・虫の目・魚の目)」をどのように育てていますでしょうか。これはあくまで物事の基本的な見方になりますから、肝心なことはこの着眼点を活用して、具体的な課題解決ができるようにいかに育成していくかという点になります。

 

 最近は、アクションラーニング型の研修を取り入れる中小企業も増えてきました。現状分析の段階で、3つの目を育成する着眼点を盛り込んでみてもよいですね。ちなみに、アクションラーニングとは、グループで現実の問題に対処し、その解決策を立案・実施していく過程で生じる、実際の行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、個人、そしてグループ・組織の学習する力を養成するチーム学習法(NPO法人日本アクションラーニング協会)です。

https://www.jial.or.jp/about/detail/