キラッと光ろう★ 組織の力で価値を最大に!

組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

働き方改革は経営戦略

 先週あたりから、朝の電車も少しずつ以前の密度に戻りつつあるなと感じています。そんな中、緊急事態宣言が明けても、テレワークを継続する企業が増えています。これまでテレワークの推進は、従業員の就業継続を支援する施策(育児や介護との両立など)の一環として取り組んできた企業が多いと認識しています。しかし、ここに来て少し状況が変わってきていると感じています。

 

 狙いが雇用の定着から収益力向上にシフトしています。具体的には、スペースコストを付加価値に変えようという動きです。従来、社員全員が出社して業務を行えるスペースを半分以下にして、スペースコストを抑える動きです。テレワークが定常化すれば、座席数は限られた数でよくなり、ミーティングスペースやコピーなどの必要なスペースさえあれば、オフィスは機能します。

 

 例えば、毎月の家賃が200万弱かかっていた場合、テレワークの補助費用が一人数千円でも6割から8割の固定費低減に繋がります。収益構造において損益分岐点ラインがどこかは大きなポイントです。使っているだけで発生するスペースコストの低減により、固定費回収ラインを下げれば、当然収益面で他社と差異化を図ることができます。

 

それも、1~2%の低減ではなく、営業利益構造が大きく変わりますから、商品やサービスにかけられるコストも変わってきます。そうすると間接的には商品・サービスそのものの質にも大きな差がつくのではないでしょうか。今までと同じような働き方、行動をしていても、そこにかかってくるコストは変わりません。

 

 これまで習慣づけられた行動を変えることは難しいのですが、今は変えられます。イレギュラーな状況が、常識になろうとしているからです。今までの働き方・行動が強制的に見直し始められています。行動を大きく変えることで、ライバルに差をつけるチャンスだと思いませんか。

 

 固定費の中でも、大きな要素を占めるのが人件費と家賃です。人件費は企業にとってブレイン、すなわち付加価値そのものですから、最後まで削減検討をすべきでない点と言えます。スペースコストは、アイディアが生まれる環境とも言えますが、昨今teamsやslackなどのコミュニケーションツールの導入により、どこにいても対話が可能となっています。

 

 スペースありきではなく、「より創造的」「より生産的」且つ競争力のある収益構造という視点で働く環境を見直してみると、必ずしも従来のやり方が良いとは言えないのではないでしょうか。

 

 また、スペースコストを浮かせた分を単純に利益創出するのではなく、開発費に回すことも重要です。コロナ禍においては、業況によって開発費を削減する企業も多いですが、世の中のライフスタイルが変化する今、将来のためにお金を使うことが大切です。

 

 開発費と一言にいっても色々あります。社内のIT投資を進めて紙伝票フローをなくす、事業の高度化に向けて成熟産業で活躍していた人材を採用する。今新たなニーズが生まれています。人も流動化しています。投資をしてでも、その変化の中から新たな価値を形づくっていく時ではないでしょうか。

 

 皆さんの会社では、社員の行動と収益構造について、どのような議論がなされているでしょうか。受注に向けた行動パターン、商品開発の進め方、商品やサービス自体の粗利率のとり方、既存のお客様とのつながり・ケアへの行動。この行動そのものが働き方であり、どこで何をどのようなプロセスでするのか、その場所や取り組み方への変革議論が働き方改革であり、次の戦略につながります。

 

 仮に、今2億円のキャッシュがあったら、何に投資しますか?

 どういう行動に投資しますか?