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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

新規事業はアイディア出しの工夫から

 昨今様々な製品がデジタル化されており、既存の取引先の様相が大きく変化している企業も多いですね。また、製造業だけではなく、卸や小売業も大手企業による吸収合併や再編などにより、業界の寡占化がさらに進んでいます。

 

そのような中で、中堅中小企業経営者様からこんな相談を頂くことが多くなっています。

「製品構造の変化により、主要な取引先からの受注減が見込まれるため、新たな商品開発を進めたいが、なかなか良いアイディアが出てこない」

「業界の吸収合併で、大手のチェーン傘下に入る企業も多いが、我々は事業改革を遂行し独立して歩んでいきたい。社内で新規事業を検討したが、どうしても既存事業の延長線上のようなアイディアしか出てこない」

 

なぜでしょうか?

 

 そもそも新規事業には2つの側面があると考えています。一つ目は自社の売上を拡大するための新規事業。もう一つは自社のプレゼンスを向上させるための新規事業です。この二つは似て非なるものです。全社は、既存事業ではやっていないが、世の中に既にある事業を買ってきて規模を大きくすることで実現することができます。

 

 一方後者は、請負から自社ブランドの開発や新規チャネル・サービスの開発による新規需要の発掘が必要になります。地域における存在感を高めて独自性を持って事業を運営していくためには、後者のケースでのターゲット転換への挑戦が重要になります。今回は、プレゼンス向上を狙いとした場合の新規事業開発について記載します。

 

 上記の前提を踏まえた上で、よく聞かれる問題として目の前の利益を想定してしまうことです。経営企画部で新規事業案を検討するケースが多く、毎年策定する経営計画・事業計画の延長線上で話し合いが進められてしまうことが多いのです。

 

 初めからこの事業で売上がどの程度確保できるのか、投資した建物や設備は何年で返せるのかといった現実性の部分に力点が置かれると、どうしても「できる範囲のことをやる」という思考に陥りがちです。

 

 特に、製造設備や自動車等の製造部品製造といったBtoB事業を営んでいる会社が、自社の技術を生かしてBtoCの商材を開発製造・販売しようとする場合、利用シーンの想定が重要になりますが、その過程に慣れていないため、過剰スペックの商品や利便性の低い商品構想になりがちです。

 

 事業化の最終段階では、実現可能性の評価は重要なのですが、初めからそこに力点を置いた開発プロジェクトを始めてしまうと、なかなか良いアイディアは出てきません。

 

 事業開発の基本的な考え方として、保有技術やリソースなど自社の強みから商品・サービスを生み出していくプロダクトアウトの発想と顧客の潜在ニーズをトコトン追求し商品化につなげるマーケットインの発想があります。

 

 初めに、自社の強みを振り返ることは、自分たちのオリジナリティを再確認する上で重要です。しかし、一旦棚卸をした段階で、マーケットインの思考に切り替える必要があります。ポイントは、自社の提供している価値を抽象化して考えることです。

 

 例えば、あるカミソリを製造しているメーカーがありました。その会社・事業の価値を見直した時、人をキレイにすることを提供価値としていると定義できました。そこで、「キレイにするということ」で他にどのような貢献ができるかを考えました。

 

 顔を剃ること以外に、キレイにすることは沢山あります。人の生活の中でキレイにする、したいと考えた時にどんなことが思い浮かぶか、この視点から考えることがマーケットインの発想につながります。

 

 今の技術やリソースでできるかは一旦置いておいて、ユーザー目線で潜在的なニーズを想定します。新規事業開発において工夫したいことはアイディアの出し方です。アイディア検討の段階で、こんな商品があったら良いなと完成イメージのアイディアを沢山持ってくることがあります。

 

 しかし、アイディアの前に「人をキレイにする」といった提供価値において、どんな潜在欲求があるのかを想像することで、ユーザー目線で良い商品・サービスを生み出すことができます。こんなことができたら、もっと簡単に化粧ができるとか、今よりも肌の艶が出るといったシーンを想定することで、利用者が喜ぶ商品アイディアに繋がっていくからです。

 

 潜在欲求を想像する方法として、観察・ヒアリングを行います。例えば、「人をキレイにする」ケースでは、朝起きてから寝るまでにどんなセルフケアをしているか、ライフスタイルの違う人をカテゴリに分け、現状を把握します。もう少し深堀したい部分は、実際に該当する属性の人にインタビューをして、取り組みの背景や不快なコトをキャッチしていきます。

 

 アイディアは、①広く ②深く ③鋭くの三つのステップで絞り込んでいくことが効果的です。自社の価値からブレイクダウンした時に、幅広くシーンを想定します。観察・ヒアリングを通してこの部分の需要にマッチした商品・事業はあまりないという部分を深掘りし、ターゲットの心理欲求を言語化していきます。そして、商品・事業化につなげる課題解決のポイントを絞り込み、アイディアに独自性や競争力を持たせます。

 

 例えば、鋭さといった場合、キレイの事例では、「夜寝る前に食べても太らない美容ラーメン」といった着眼です。寝る前に炭水化物や糖分を取ると太りやすいですが、お酒を飲んだ後や夜小腹がすいた時にラーメンが食べたくなることはあります。それを逆手にとって、太りにくいものを考えることで、普通のラーメンとは異なる需要を発掘することができます。

 

 新規事業はアイディア出しと絞り込みで決まるといってもよいでしょう。世の中には既にアイディア出しの方法やツールがたくさん出ています。それらの力を借りて、アイディア発掘・発想力を高めることも可能です。

 

 皆さんの会社では、どのようなプロセスで新規事業を作られていますか?

アイディア出しに困っている方、是非ご相談ください。