キラッと光ろう★ 組織の力で価値を最大に!

組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

離職防止のための第一歩

 ゴールデンウィークが明け、多くの県では緊急事態宣言も解除され、少しずつ企業活動が活発化していますね。新入社員の方々も会社に慣れて、五月病も問題視される時期です。そのような時期でもあり、今週は「離職防止」について考えてみたいと思います。経営者様との面談の中で、最もよく出てくるキーワードベスト3に入っているのではないかと思うくらい、よく聞かれます。

 

 一口に離職といっても、その理由は様々です。「最近辞める人が多いので、何とかしたい」ということで、休暇を取りやすくしたり、福利厚生を充実させたりする企業も多いですが、まずは、何が問題か、どこが問題かを探ることが第一歩です。

 

 離職の要因を探る指標として、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した動機づけ・衛生要因の二要因理論という考え方があります。動機づけ要因とは、仕事の達成感ややりがい、上司などからの承認、裁量のある仕事や責任、昇進の可能性など仕事を行っていく上で満足度が増す要因です。一方で、衛生要因とは、職場の人間関係や物理的な職場環境、給与や処遇、会社の制度やルール等欠けると職場の不満足を引き起こす要因です。

 

 これらの要素を絡めて、従業員にアンケートをとり、会社全体またはある年齢層や職層における満足または不満足を測定したものがES調査(従業員満足度調査)となります。最近では調査票を一から設計しなくとも、簡単にできるツールが提供されています。(例:https://research.nttcoms.com/info/es.html

 

 私自身はこれまでES調査に何度も関わったことがありますが、経験年数が浅いほど、コミュニケーションや人間関係に意識が向き、経験年数が高まるほど、動機づけ要因となる仕事のやりがいや裁量を重要視する傾向にあります。若手社員の離職が問題視されている場合は、職場内の人間関係や風土を見直す必要があるかもしれません。

 

ここで、一つ問題です。

 

<職場環境の見直しについて>

ある企業では、一部門の離職率が非常に高かったそうです。しかし、その部門のリーダーが変わったところ、離職する人が減ったそうです。さて、そのリーダーが最初にしたことは何だと思いますか?

 

  • 給与を上げた
  • ルール見える化した
  • 残業を削減した
  • 部下の不満を聴いた

 

 最初から読んで頂いている人には一目瞭然ですね。

 答えは、「④部下の不満を聴いた」です。正しく書くと、部下が日頃から職場や仕事の進め方について感じていることを聴き、電球や床のフローリングから仕事や会議の進め方など大きいことも小さいことも受け止めて、できることはすぐ実行したことです。

 

「この人、自分たちの声を聞いてくれた、受け止めてくれた。こんな風に行動してくれたなら、私たちももう少し協力しよう」という気持ちになったようです。部門長の裁量でできることできないことがありますが、職場で働いている社員の方々は半径2m以内の人間関係やチームの仕事の進め方が、満足不満足に直結します。

 

 まずは、それぞれの職場のコミュニケーションを円滑にする、個々の価値観や考え方を尊重して受け止める場を作ることが、人材の能力を発揮できる環境形成のスタートラインとなるのではないでしょうか。

 

 離職防止に対する対策として、問題発見の場づくりが大切なことはお伝えしました。一方で、問題に対して会社としての行動を見せること、変化が社員にわかることは、より重要です。ES調査をやりっぱなしにして、改善がされないと、不満がさらに大きくなります。

 

 これは私自身が実際に体験したことですが、3年に一回必ずES調査を実施する会社がありました。回数を重ねるごとに、満足度が下がり、自由回答の言葉もマイナスで厳しいことが多くなります。それは、経営層が状況を把握、評価をするためだけに活用されていたからです。トイレを綺麗に改修する、照明を明るくする、面談時間を作るなど、どんな小さなことでも良いので、変化がわかる改善に取り組むことで、不満軽減や満足度アップにつながる方策につながります。

 

 皆様の会社では、離職防止に関して問題の発見をどのように行っていますか?

 また、問題解決の取り組みを社員の目に見える形で取り組んでいますか?

離職防止には、制度やシステム、ルール整備などの施策よりも社員の気持ちを受け止める場を作ることが第一歩ですね。