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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

在宅勤務導入を成功させるために!

 コロナウィルス対策として在宅勤務に切り替える大企業が増えています。中堅・中小企業でも働く環境に対して意識の高い会社や業態的に実施しやすい企業は、以前から環境整備が進めてられていました。

 

 一方、これまでIT環境や制度としては整備されていたものの、実際に利用される割合は少なかったようです。営業の日報作成など移動中の時間を活用してできる作業に限られていたり、内勤の仕事は会社に来て行うものという考え方が浸透していたことも影響しているようです。

 

 しかし、今回、コロナ対策として利用せざるを得なくなった企業が続出しました。一部の社員だけではなく、様々な職種がある中で全社的に運用していくためにはどうするか。既存事業を業態・業務種別毎に整理して、準備する事項や想定課題やその対応策を考えてみます。

 

業態別にみると、在宅勤務の向き不向きは分かれます。

基本的なことですが、②の労働集約型ビジネスは最も需要な高い業態です。

①工場などで設備機械で生産する製造業

生産工程に従事する人材の在宅勤務は難しい

与信・見積・受発注・出荷指示・請求書作成・入金管理の範囲は可能

 

②労働集約型で生産をする製造業・サービス業

(WEB制作、執筆、縫製などの作業、倉庫業など人の作業がそのまま付加価値につながる業態)

場所に依存しない作業の場合は、比較的簡単に在宅に移行可能

従来から外注化が進んでいる業態である

クラウドワークスなどすでにその部分に特化しているサービスもあり、在宅勤務の代表的な業務として認知されている

 

③商品を流通させる卸売業

生産自体は発生しないので、営業に関する付随業務、

与信・見積・受発注・出荷指示・請求書作成・入金管理が実施可能範囲

ただし、通販事業がある場合は、WEB業務も在宅可能範囲

 

④商品を消費者に売る小売業

店舗で売る場合は、店舗作業の多くが現場に出向かないと難しい

ただし、通販事業がある場合は、WEB業務も在宅可能範囲

 

上記は、「プロフィットセンター」の業務範囲で考えたものですが、この他に会社運営に重要な「コストセンター」の仕事があります。経営企画・人事・経理・財務・広報・営業・業務企画などが該当します。これはどこの業態でも発生する仕事です。

 

上記をもとに、既存業務を整理すると、以下の3つの業務特性に分かれます。

①プロフィットとなる付加価値業務(原価計算では直接業務)

②売上・支払プロセスにつながる業務

 接点→引合→与信→見積→受発注→生産→出荷→売上→請求→入金

③会社運営に関わる業務(原価計算では間接業務)

 経営企画・人事・経理・財務・広報・営業・業務企画

 

①の業務で、個々人が成果物を出していく業態では、すでに在宅化されているケースが多いです。

②は、在宅で実施できるという認識があまり高くないです。一方で、このプロセスに従事している社員の割合は高く、この部分が在宅化されることで、働き方は大きく変わります。

③については、大企業では、今回のコロナウィルスをきっかけとして在宅化が進む可能性が高いです。一方中小企業は、少数精鋭で実施しているケースが多いため、数人のリーダーに環境を付与すれば、比較的在宅化しやすいです。

 

ここで、在宅化を行う際に一般的に課題とされる事項を挙げてみます。

以下の3点が考えられます。

・情報/データの管理

 第一に情報漏洩を予防しなければならなりません。そのためには、資料などの持ち帰りなしに、必要な情報をデータベースから収集できるか、業務システムへの情報更新ができるか、といった点が重要になってきます。IT環境の整備だけでなく、情報の整理・整頓、業務のルール整備が必要です。

 

・勤務時間の管理

 現状のITツールでほぼ網羅できる範囲です。ただ、企画の検討などパソコン上で実施していない仕事について、どこまでモニタリングを行えるかが課題です。カメラを利用するなど実際の勤務時間の正しい把握が必要です。もしくは、時間はパソコン時間を目安にして、成果件数や成果物を重視する視点に切り替えることです。

 

・成果の確認

 もともとプロフィットセンターの仕事は、時間当たり件数などで定量的に評価しやすい状況にあります。一方で、コストセンターの業務は、成果が見えにくいため、日次・週次・月次の業務、突発業務や成果物をしっかりすり合わせしておかないと適切な評価ができなくなります。

 

上記の課題に照らして考えると、業務別には以下のような考慮が必要となります。

①プロフィットとなる付加価値業務

在宅化ができやすいが、出来高制になっていることも多いです。成果に対する投入時間やその裏にある企画やノウハウのスキルがばらつきやすくなります。できる人はどんどん成果を出すが、できない人は時間がかかって仕方がないという状況です。

例えば、企画書を共有したり、考えるステップや行き詰りやすい箇所をフォローするようなノウハウ集を作成するなど、成果を出しやすい情報整備が必要となります。また、在宅で進める場合、気軽に相談できる環境が失われがちになるため、いつでもチャットやTV電話のできるオンライン環境の整備も重要です。

 

②売上・支払プロセスにつながる業務

在宅で行うためには、悩まずに作業を進める必要があります。可能な限り顧客や業務パターン別にマニュアルを作成します。業務の流れだけではなく、手段や金額選定など情報選択が必要な場面を洗い出し、判断基準を決め可視化しておくとよいでしょう。

経験が浅い人は、マニュアルだけでは対応できないことも多いものです。わからないことは、Skypeのチャット機能などを活用し、先輩社員や同僚に聞けるようなフォロー体制も重要です。

また、「情報を参照しながら情報を入力する」という行為が多いため、ノートパソコンとは別に、モニターが必要となります。ノートパソコンでは、生産性が著しく落ちるます。これまで、紙媒体の伝票や資料をみながら、情報更新を行うことが習慣であった状況が変わることへの抵抗も多少は発生すると思われます。「まずは、いっぺんやってみよう」というリーダーの声掛けと率先垂範も重要です。

評価基準は、予め決めておきます。顧客や商品群毎に作業難易度を層別し、難易度に合わせた時間あたり標準件数を設定する方がよいでしょう。

 

 ③会社運営に関わる業務

経営企画・人事・経理/財務・広報・営業企画/準備・業務企画・WEB管理などが挙げられますが、上記のうち、経理処理などルーティン化しやすい仕事は②のやり方で取り組むことができます。人事評価、経理処理、WEBサポートなど週次・月次・年次でルーティン化されているものは洗い出し、見積・受発注などルーティンの間接業務の一部として標準化します。成果も時間ではなく、時間と業務処理内容の掛け算で考えとよいです。

一方で、経営計画や予算管理、営業企画検討などは、個人の仕事以上にミーティングを通した検討が多くなりがちです。そのため、会議の進め方や人的調整業務の見直しが必要となります。

また、③は間接業務になるため、情報収集や個々に考える時間、点検やモニタリング、職位間の調整、報連相、資料作成など可視化、標準化ができにくい行為が多々発生します。ですから、一人ひとりの一日の行動を振り返り、業務一覧にはない行動や業務のための準備や手間がどの程度あったのかを検証する必要があります。Outlookの機能を活用して、行動自体を可視化し、上司と一緒にやらない仕事を決めることも有効的です。

 

①~③の業務に共通することとしては、在宅化する前に、業務の洗い出し→精査→標準化→基準化→可視化をしておくということです。標準化→基準化→可視化のできない業務はできるだけ排除し、生産性を高める意識も大切です。

 

一方で、新規事業などこれから新しく始める取り組みについては、”遊び”の感覚で自由に物事に取り組む意識が大切です。生産性向上や拘束圧力が強くなると、自由な発想ができにくくなるからです。

 

在宅化では、既存事業の効率化で余った時間は、skypeやチャットを使って、新しい商品やサービスに関する情報収集や検討、社員教育を相互に行うことも有効的です。社外だからこそ、新鮮な目で物事を見れたり、普段気に留めないことに気づくことができます。社外で仕事をすることのメリットも最大限活用したいものです。