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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

業務設計力がDX推進を左右する

 コロナ禍で様々なセミナーがオンラインで開催されるようになりました。その中でも、昨今目立っているテーマが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。DXとは、もともと2004年にスウェーデンのウエリック・ストルターマン教授によって提唱された「IT技術が浸透することにより、人々の生活を豊かにしていく」という概念です。

 

日本では、経済産業省で以下に産業界におけるDX指針が出ています。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html

 

 私の認識では、DXを実行する上で4つの技術ステージがあると捉えています。1つ目が、Web・デジタル化。既存の業務をできる限り、電子データや処理に置き換えることです。2つ目はIoT化です。間接部門であればオフィスのエネルギー使用量、直接部門であれば向上の稼働に関する情報をインターネットと繋げて、モニタリングしたり、問題状況を自動で感知する仕組みなどを構築したりすることです。

 

 3つ目は業務自動化(RPA)です。Web・デジタル化やIoT化した処理をいくつか繋げて、自動で一連の業務処理を実行する仕組みを構築することです。4つ目は判断の自動化(AI)です。過去の実績や回答を学ばせて、自動的により正解に近い回答を取捨選択させる仕組みを作ることです。

 

 多くの企業で、技術ステージ毎に何ができそうかを洗い出すことは実施されているようです。一方で、可能性が膨大に出てくるため、優先順位をつける、その中から自社に合った手段を導入していくことが難しいようです。

 

 そこで、よく提示されている大きな指針としてビジョンや事業戦略から落とし込む方法です。製品や事業のライフサイクルから効率化する製品や事業ラインを特定する方法が有効的です。市場が成熟期にあり、とにかく効率化してどんどん量を売っていく必要がある事業では、Web・デジタル化と業務自動化により、提供リードタイムの短縮と人件費の低減により競争力を高めていくことが求められます。

 

 新規事業の方がWeb化やAIを搭載しようと考えがちですが、いずれも処理量が多かったり、過去の取引データが多かったりする方が機能を発揮しやすいため、データの少ない新規事業での取り組みは要注意です。

 

 では、現時点でWeb・デジタル化が進んでいないのに、IoTやAI、RPA導入は可能なのでしょうか。私の認識上ではYesです。Web・デジタル化が進んでいなくても、業務処理における手順が明確になっており、ルールを守る文化がある。また、判断基準が明確化されており、例えば規程類が実用的になっている。

 

 さらに、その状態について頻繁に議論がなされ、常に更新していく風土がある会社は比較的容易に仕組みを刷新することができるのではないかと考えています。そのような会社は手段が変わっても、仕組みを構築することに長けているからです。

 

 要するに、チーム設計がうまい会社、設計をもとに実際に業務運用をしっかりできる会社は、方法が変わっても導入に手こずることは少ないのではないかという認識です。チーム設計とは、取引プロセス毎にどこの部門の誰が、いつどのような判断基準で何をやるのか、取引における重要ポイントが明確になっており、それが設計書(手順書や指南書など)に落とし込まれている状態です。そのような状態では、目的の見えない業務処理は発生しませんし、いち担当者が属人的に設計にない業務を発生させることもありません。

 

 また、運用では設計図をもとに業務処理が半自動的に流れていくという状況です。ルールを守る、手順通り実施する。その前提として業務処理の目的が理解されているということが求められます。これは、仕組みの精度の問題だけではなく、組織風土の問題があります。人に仕事のやり方を任せている企業では、なかなかチーム設計意識は醸成されません。

 

 例え、取引先別に担当を振り分け、個人が責任を持って対応することが求められる業態でも、仕事の流れや仕事への取組みは複数人の体制やチームで標準化しておく必要があります。DX導入を検討する際には、まず段取り上手、設計上手な状況になっているか、企業風土の面から見てみることをお勧めします。

 

皆様の会社はいかがでしょうか?