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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

人事評価への疑問視

 本格的に梅雨の季節になってきました。マスクに傘、高い湿度。ハンディ扇風機が良く売れそうです。さて、今週は日頃から私がどうしたらよいかと考えていることについて書きたいと思います。

 

 皆さんの会社では、どのように人事評価を実施していますか?おさらいとして記載すると人事評価とは社員の業務に対する遂行状況や成果、能力を評価し、賃金や昇進、異動などの人事施策に活かす仕組みのことです。

 

 一般的に人事評価には、具体的な仕事の内容とレベルが定義されている職務基準と期待する能力を定義した職能基準があります。その基準をもとに個々の等級や役割に属する社員の業績や行動を評価します。その評価結果をもとに昇給・昇格・賞与など処遇への反映や教育などの能力開発を行います。

 

 もっと簡単に言いますと、うちの会社では入社何年目またはこのレベルの社員はこういう行動や能力が求められますという事柄を明らかにし、その行動や能力に対する達成度を測るものです。

 

 私自身も長年この方法で評価されてきました。また、プロジェクトを通して等級別の評価項目を作成したこともあります。その経験の中で感じていることは、社員一人ひとりが性格も志向やもともと持っている特徴も違う中で、果たして画一的な行動を期待されることが適切な評価につながるのだろうかということです。また、評価される側としてあるべき人材像を一方的な提示されて、果たして主体的に意欲をもって動くことができるのだろうかということです。

 

 適切な評価という点では、数字は嘘をつきません。ですから粗利の達成率や受注率については共通の指標にしても問題ないと思います。また、「顧客満足」や「挑戦」「率先垂範」といった定性項目でも業績と同じように経営にとって必要不可欠の着眼点は、共通の評価指標としてはとても良いです。一方で、この項目を達成するための具体的行動については、定義する際に注意が必要です。

 

 例えば、「与えられた目標を達成するために、論理的かつ的確に分析し~」といった具体的な手段が定義されている場合は、その能力に長けている人は良いですが、そうでない人もいます。しかし、その能力がないからといって目標達成ができないかといったらそうではありません。論理性に乏しくても、聴く力や高いコミュニケーション能力により顧客と深いつきあいができて、受注をとってくることができる人もいます。

 

 重要指標の達成に向けた手段は人それぞれですし、その人のキャラクターに左右される要素が大きいです。行動を定義してしまい、その内容で評価をして処遇につなげてしまうと、その人がその人に合った方法を実施すれば評価されたかもしれない可能性や機会を奪ってしまうことになります。人材を活かすという観点からも非常にもったいないことです。

 

 また、評価される側も行動を細かく基準として規定されてしまうと、深く考えようとしなくなるリスクがあります。評価されるような行動を意識し、評価に値する根拠づくりに目線がいきがちです。その結果、その人らしさや良さが仕事に活かされにくくなります。

 

ではどうすれなよいのか?

 

 「顧客満足」や「未来への挑戦」「率先垂範」という経営上重要な切り口に対して、求める経営ビジョンを示し、その達成に向けた具体的な行動や目標を自分で設定してもらうことです。例えば、部門のリーダーであれば、部の全員の目標が達成できるように○○をするという行動の○○の部分を、定義せずに自分の得意なことや自分ができそうなやり方でその行動を考えてもらうということです。

 

 リーダーシップにもトップダウン型からサーバント型まで色々やり方があります。自分の得意な方法ややり方をトライした方が、無理に役割を演じるよりは長続きしますし、何より自分が試行錯誤しやすいのです。

 

 また、どうすれば成果に結びつくか、一所懸命考える機会ができます。環境変化が激しい昨今、一つの行動パターンを愚直にやっても結果につながらないことも多いです。その行動を考えるプロセスこそ、人材が成長する機会ではないでしょうか。