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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

マーケティングの本質「ドリルを売るには穴を売れ」

今週は本の紹介からです。

 

「ドリルを売るには穴を売れ」(佐藤義典氏書著)

 

 マーケティング理論の入門書です。次世代によるビジョン開発のプロジェクト等の課題図書させて頂いたりしています。中身はドリルと穴の話ではなく、イタリアンレストランの話です。「商品を売るには、顧客にとっての『価値』から考えよ」という趣旨で、マーケティングの4Pや4Cを考えていくという流れです。

 

 この本の素晴らしいところは、この題名にあります。商品を売ろうとするのではなく、お客様にとってのバリューを軸に考えよ!といっても、バリューとは何ぞや?という話になります。バリュー(価値)やミッション(使命)はスローガンとなっている場合が多く、その言葉自体は理解できるが、実際の商品やサービスではどう体現してよいかイメージがつかない場合も多いです。

 

 この「ドリルを売るには穴を売れ」という言葉は、とてもシンプルでイメージしやすいと思います。自分の仕事のやり方を振り返った時に、ドリルを売っていないかと考えることができます。顕在化している目の前の商品だけを見ると、どのような会社もほぼ100%ドリルを売っています。

 

 収益を上げようと目先の目標に目がいくほど、ドリルを売ろうとする傾向が強くなります。しかし、お客様側の視点に立ったら、本当に欲しいのはドリルではないのです。

 

 「穴があけたい」「素晴らしく綺麗な穴があけたい」

 もう少し想像すると、「そこにピッタリ入る支え棒を入れたい」

 「それはしっかり骨組みを固定するため」

 

 穴に着目すると、お客様が何をしたいのか、何を求めているのか、色々な情報が出てきます。お客様との会話も深まりやすくなり、よりお客様の具体的な要望が聞きやすくなります。

 

 また、ドリルに目が行き過ぎると、「お客様の穴は必ずしも、ドリルでないと開けられないわけではない」という重要な事実に気づきにくくなります。プレスでポンっと空いてしまうかもしれない。けれども、一所懸命ドリルを売ろうということに気をとられると、その視点に気づきにくくなります。

 

 もっと効率的に穴をあける方法があることを知ったお客様は、ドリルを買わなくなります。穴にアンテナを張っておけば、代替手段が出てくる危機感も早めに持つことができます。

 

 一方、業態によっては「穴」が何なのかがわかりにくい場合もあります。お客様が何でうちのサービスを利用しているのか、何で商品を買ってくれるのか、明確にこれっというものがわからない場合です。例えば、「安心・安全」「癒し」「美味しい」等という言葉は、漠然としていて捉えにくいです。

 

 それはお客様が求めている「穴」を意味するのですが、そこに着眼するとうちの会社の商品やサービスでなくても良いのでは?と考えてしまいがちです。そういう場合は、「穴」=ターゲットと捉え、より絞り込む必要があります。

 

 この本の事例ではイタリアンレストランのメニュー・サービス、店舗開発の話が出てきますが、「誰がどのようなシーンで利用するのか」を深く掘り下げています。マーケティングの世界においては、ペルソナ分析を重要視しています。ターゲットをいくつか設定して、そのターゲットが満足する、また買いたくなる、利用したくなる「穴」を考え、「ドリル」を開発することがポイントです。

 

 世の中には、プロダクトアウト型のシーズ発の企業とマーケットイン型のニーズ発の企業があります。シーズ発の企業では、ドリル側の革新性や新規性大切と言われますが、例えシーズであっても、それが現状のニーズよりもより先の未来を見ているということで、ニーズ(穴)を見なくても良いということではありません。

 

 スティーブジョブズ氏が開発したiphoneも革新的で新規性はあったでしょうが、より先の未来(穴)を想像したからこそ、まだないドリルを開発することができたのでしょう。

 

 あなたの企業の営業活動では、お客様が欲する「穴」を捉えていますか?

 

 「ドリルを売るには穴を売れ」(佐藤義典氏書著)

 

 この本は社内の育成活動でも活用できそうな本です。振り返りのツールとして活用されてみてはどうでしょうか。