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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

プロジェクト管理はDX導入を円滑にする

 今週も、DX(デジタルトランスフォーメーション)のテーマでお送りします。4回目の今回は、プロジェクトマネジメントについてです。プロジェクトとは、何らかの目的を達成するために期間を区切ってメンバーを集め取り組む活動のことです。

 

 プロジェクトマネジメントとは、その活動自体を管理していくことです。目的の共有はされているか、誰に共有していくか、どのような範囲を対象に取り組むのか、予算がどの程度使うのか、いつ議論するのか、だれと議論するのか。このようなことを計画し、実施できているかチェックすることです。

 

 例えば、社長が経営方針のテーマとして、「IT技術の活用による生産革新」を挙げたとしましょう。これを部門長会議で話し合うよう社長から指示がありました。そうすると、多くの場合、会議でどのような可能性があるのかということが話し合われます。目的達成のために何をやるのか、何をするとレベルアップや解決策につながるのか、中身の話が中心になります。

 

 一方で、段取りよく進めるためには、テーマの意図することやその方針を重点としている背景について整理する、共有するということに時間は取ることが大切です。関係者が多くなりがちなDXの案件では、立場や部門の異なる複数の人が関与するケースが多いからです。

 

 しかし、多くの場合、プロジェクト自体の進め方や管理は疎かになりがちです。どう組織活動を計画していくと良いかという点は見えにくく、暗黙の了解で進んでいく風土が根付いている企業が多いからです。特に、目標の設定や議論すべき内容の共有は、知っていて当然、わかっていて当然になりがちです。ですから、共有するという活動自体を計画に組み込まないと後になって何のためにやっているのか、話し合いに参加した人の中に意識のズレが生じやすくなるのです。

 

 では、活動の中身ではなく、活動の進め方について、どのようなことを話し合う必要があるのでしょうか。活動を始める前に、以下のようなことを話し、計画表に落とし込んでおく必要があります。

・どの程度の期間で実施するのか

・どの程度の予算と人的リソースを投入するのか

・いつまでに結果を出すのか

・結果を出すために、何を実施するのか

・今回はどのようなメンバーを収集するのか

・どのタイミングでミーティングを実施して何を話すのか

 

 有名な管理ツールに「ガントチャート」があります。ガントチャートとは、プロジェクトの工程管理で用いられる図表の一つです。ガントという名前は、1910年代にアメリカの機械エンジニア、ヘンリー・ガントが考案したことに由来しています。名前は重要ではありませんが、目的・目標、アクションと担当者、スケジュールが一表で管理することができる計画管理表です。

 

 プロジェクトの開始時点で策定される計画管理表は、中身がスカスカであることが多いです。特にDXの場合は、設計を話し合う前には、どのようなことが想定されるか想像しにくいものです。また技術者の声が大きすぎると、導入するための技術論の方に目線が行きがちです。そうすると、計画自体、書いても意味がないのではないか、現時点では想定できることが少なすぎるとなりがちです。

 

 全社的な視点でプロジェクト計画を策定するのは止めておいて、まずは生産技術で考えをまとめて、全社に展開しようとなりがちです。しかし、それを進めてしまうと部門最適なもの、技術導入の話に終始しやすくなります。

 

 計画がスカスカでも全社的な視点で、プロジェクト事務局をつくり、企画や管理部門がプロジェクト運営を担うことで全体最適の視点でプロジェクトを進めることができます。スカスカな計画表であれば、それをプロジェクトの柱にして話し合い進めていくごとに、書き足していけばよいのです。

 

 一般的に技術的な難易度が高くなると、プロジェクト管理に着眼しにくくなります。プロジェクトはフェーズが変わればメンバーも変わっていく傾向にあります。後からプロジェクトに入った人が即戦力になれるようにするためにも計画管理表をもとにPDCAを回していくことは必須です。

 

 あなたの会社ではいかがでしょうか。プロジェクト管理に関する問題はありませんか?会社の昔からの習慣や経営スタイルもプロジェクト管理の実施度に影響します。DX導入を視野に入れているのであれば、是非自社の組織活動の進め方から見直してみてはいかがでしょうか。