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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

プラットフォームビジネスの検証

 コロナウィルスの影響で、テレワークをする日数が増え、経営者の皆様も自宅から仕事の指揮をとる機会が増えているのではないでしょうか。生活の中で行動が変わる時は、新しいことを見て考えるチャンスですね。実際、私自身、この一ヵ月でウェブアプリを活用する機会が格段に増えました。

 

・出前アプリ

・ベビーシッターアプリ

・家事代行アプリ

・習い事検索アプリ  などです

 

 これは、全てCtoCプラットフォームビジネスです。インターネットの爆発的普及により、日本でも2013年頃からプラットフォームアプリサービスが続々出てきました。そして、4Gから5Gと通信システムの高度化が進み、さらに多様なウェブアプリサービスの運営が始まっています。

 

 世の中を見渡してみると、様々なプラットフォームがあります。ITだけではなく、仕入れ先と販売先のメーカーをつなぐ商社もプラットフォーマーです。コンサルティングも課題の特定をコンサルタントがやり、解決策としてSierやITベンチャー、税務・法務などの専門集団につなぐケースもあり、プラットフォーマーと言えるでしょう。

 

 2010年に平野敦士カール氏とアンドレイ・ハギウ氏による「プラットフォーム戦略」という本が出版されました。最近目を通していなかったので、改めて、自分自身が利用したことのあるベビーシッタープラットフォームを事例として、重要なポイントを考えてみることにしました。

 

 私が利用したことがあるサービスは、キッズラインというプラットフォームです。以前、このブログでも紹介しました。類似サービスにもアカウント登録していますが、コンテンツの充実度はキッズラインがとても良いと感じています。

 

 そもそも、このベビーシッタープラットフォームの良いところは何か。従来からベビーシッターサービスはありました。しかし、申し込みをして、当日家に来てくれるまで、誰が来るのか、顔もプロフィールもわかりません。また、人材を雇用して派遣しているため、最低時給が高くなってしまいます。

 

 ベビーシッタープラットフォームの良いところは、一番にどんな人がいるのか、どんな人が来てくれるのかが、事前にウェブアプリ内の情報をみてわかるところです。また、それぞれのシッターさんがバラエティに富んでいて、経験回数によって価格が異なること以外にも、その人が出来ることによって、価格が異なります。

 

 「プラットフォーム戦略」の本で、プラットフォームの機能がいくつか書かれているのですが、その中でも、検索にかける時間の削減と利用者が負担するコストの削減という二つの重要な機能を満たしてくれています。

 

 検索機能については、地域・日時・単価・料理など希望にチェックして、希望するキーワードを入力すると、候補となるベビーシッターが何人かピックアップされて、それぞれの人の自己紹介ページをみることができます。非常にシンプルで、且つそれぞれのベビーシッターさんの持ち味の違いを一目で見ることができます。

 

 コンテンツ充実のポイントは、自己紹介ページの自由度が高い点です。同じベビーシッターでも、「ピアノ教えられます」「一緒に料理できます」「病児保育担当できます」などメッセージが異なりますし、それぞれの育児に対するメッセージも異なります。自分の考え方や価値観、育児時の希望に合わせて選択することができます。

 

 また、安心・安全という面でいくと、過去に利用した人の評価を見ることができます。5段階評価と一言コメントが掲載されており、利用前に客観的な評価をみて、選ぶことができます。保育園や幼稚園教諭の経験や免許の有無、シッティング回数も一目でわかり、利用者の安心感につながります。

 

 プラットフォームビジネスは、利用者が増えるまで、かなりのイニシャルコストがかかります。システム投資、認知のための広告など金額も大きいです。ですから、初めの資金調達は必要不可欠です。また、リリース後は、登録者数を増やすことが先決です。メーカーのように完成品を市場に出すというよりは、枠組みを構築した段階でリリースし、コンテンツを進化させていきながら、登録者数をとにかく増やすことです。

 

 利用者が情報を書きやすいよう、フォーマットの自由度を上げたりやプラットフォーム内の盛り上がりも大切です。登録者の個性を引き出す、ブランディングサポートも効果的です。一方で、口コミによる広がりが集客の大きな要素になりますから、誹謗中傷をいう人やサービス提供者・利用者が困ることをするような人には、利用制限を行うなど、ガバナンスを利かせたルールづくりも大切です。

 

 今回、ご紹介したサービスはベビーシッターですが、これが色々な分野に応用することができます。特に人と人や、人とプロジェクト、プロジェクト×プロジェクトをマッチングさせるサービスでは、コンテンツの作りこみについて参考にすることができます。

 

 従来型ビジネスの中でも、商社は、営業担当一人ひとりをブランディングしながら、商品をネットで買ってもらうというITプラットフォームの要素を取り入れて、企業の付加価値を高めることができると思います。また、ベンチャーのノウハウを老舗のメーカーや商社の業務に委嘱するといったことも、プラットフォーマーとして動くことができます。

 

 世の中には、たくさんの社会課題があります。このプラットフォームの考え方とIT技術を活用し、解決できる場を作る余地はまだまだたくさんあります。新規事業を考える際の一つの軸として、プラットフォーム×社会課題という切り口でビジネスを考えてみてはいかがでしょうか。