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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

スケートパシュート界にみる変革とその対応力

 明日からいよいよ北京オリンピックが開幕しますね。

 この前東京オリンピックが終わったばかりでしたから、本当にあの夏が延期のリミットだったのだなと思います。

 

 さて、冬季のオリンピックも様々な競技がありますが、その中でもスピードスケートは日本にメダルが大いに期待できる種目でもあります。スピードスケートと言えば、個人戦のイメージが強いですが、最近は様々な種目が出てきました。

 

 昨夜NHKのクローズアップ現代で、女子パシュートの特集が放映されていました。日本は前回金メダルで今回も!と思ってみていたら、どうもピョンチャンからの4年間でかなり状況が変わっているということがわかりました。

 

 パシュートとは「スピードスケートの団体で行なう追い抜き競技」のことです。3人がチームになり一つの隊列を作り滑り、競合チームとのタイムを競います。私も詳しいルールは知りませんでしたが、隊列になって滑りタイムで競う競技なので、3人がどのような作戦で隊列滑りをしても良いようです。

 

 今まで、隊列になりながらある程度距離をとって、先頭を何回か変わりながら滑るという方法が一般的でしたが、2年ほど前に海外のチームが革新を起こしたとのことでした。3人の選手のうち、後ろの2人が前の人の腰を押すしながら滑り、先頭交代はほとんど見られなかったようです。これをすることで、3人の滑りの間隔が狭まり、交代をする際のタイムロスも減らせることで、チームのタイムを5秒以上も減らせたチームがあったということです。

 

 一方で、3人の滑る間隔が狭くなったことで、転倒リスクは大きくなります。かなり3人が息を合わせないとブレードのエッジが引っかかってしまいそうです。今までこの転倒リスクを避けるように、ある程度の間隔をとることは当たり前と思われていたのでしょう。また先頭の選手の体力を温存するために、交代は何回か行うことも当たり前だったと思われます。いわば常識を疑い、常識を覆した結果新しい滑り方が生まれたと言えます。

 

 企業で考えると、まさにイノベーション(革新)が起きた状態に近いですね。生産性を2倍以上にあげる、全く新しい価値を生み出し10倍の値段で売るためには、今までのやり方に対する常識、業界の常識を疑い、それを覆す作戦を考える発想力が必要です。

 

 それは、空から降ってくるものではなく、きっと海外のパシュートチームは、自分たちの今までの滑りや日本人チームの滑りの映像を何回もみて、どうやったらタイムを縮められるかということを必死に考えたのではないでしょうか。

 

 逆にいうと、タイムロスを起こしている箇所を徹底的に洗い出して、そこを短縮できる方策を色々検討したのかもしれません。いずれにしても、現実の滑りとしっかり向き合い、何回も観察したからこそどうすれば良いか見えてきた部分もあったのではないかと思います。

 

 企業が新規事業をつくるとき、ただ漫然とアイディア発想法に頼ってアイディアを考えるだけでは、これが必要だというものにはたどり着きません。現状の、今世の中にある事業を実際に観察しヒアリングし、自らも体験して課題をみつけ、その背後にある常識に気づき、それを突破するプロセスを経て、初めて世の中に受け入れられる事業になるのだと思います。

 

 日本のパシュートチームは、海外チームのイノベーションを見て、自分たちはどうするのか、向き合っていく様子が放映されていました。まさに、勝つために外部環境の変化を受け入れざるを得ない状況です。これは企業でもよくあることです。スケートはタイムで結果が出ますから、危機感を抱く感度も高くなりそうですね。

 

 今もトライアル中途とは思いますが、ある大会では同じように取り組むのではなく、日本の良さを生かしながら、前後の選手との手つなぎと1回の先頭交代を入れたハイブリッド形式で臨んだようです。オリンピック前の大会では、最後で転倒してしまう様子がありましたが、何回か挑戦してみるからこそ、課題が見えてくる部分もあります。

 

 今考えているハイブリッドの作戦を成功させるためには、それぞれの選手が自身の役割を認識して、役割を全うすることが重要であるということが番組の中で言われていました。一人目の選手がいかに引っ張っていけるか、二人目の選手がいかに隊列のバランスをとれるか、常時参加しないサポート選手は、一日に2回試合がある準々決勝で自分が出ることで、いかに他の選手の体力を温存させられるかという役目です。

 

 これは企業でも同じことが言えます。ずっと先頭を走るリーダーだけでは、事業は回せません。仕事をとってくる営業の人、受注した仕事を安定品質により提供する業務の人、顧客満足を高めるために常に新しい製品を開発する人、これは市場で売れそうだというものをしっかりした安定品質と生産量で作る人、それぞれの役割があります。

 

 これは供給プロセスの話ですが、縦の役割もあります。今日の仕事を確実に行う人、今日の仕事の段取りを決める人、半年後の仕事の計画を立ててて、段取りを組む人、段取りを決める人を育てる人、3年後に向けた職場の課題をみつけ、仕組みを作る人。

 

 呼び方は主任・係長・課長・部長等何等かよくわからない階層ですが、実はきちんと役割があります。皆がその役割に徹して、たまにはその役割を変えていくことで、お互いを理解し、力をより結集させることができるのではないでしょうか。

 

 パシュートチーム日本代表、革新的な方法にチャレンジすることで、またスケート界の新たな常識を作っていって頂きたいなと思います。企業経営に活かせる学びの多い特集でした!

 

日本代表ファイトです☆彡 

番組取材ノートのサイトはこちらです。

https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pbQeNwvPWb/