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組織の課題を対話で解決する専門家 大坪加奈子

東京オリンピックの余韻 ~ポジティブワードが企業の未来をつくる~

 オリンピックが終わりました。こんなに余韻を残すオリンピックってあっただろうか!開催の是非はあったものの、少なくともStay Homeがこんなにワクワクドキドキ

したのはオリンピックがあったからと言っても良い。

 

 オリンピックの前は、どのメディアを見ても、ネガティブなニュースが目立った。メディアの伝え方も、オリンピックを本当に開催するのかといった後ろ向きな発言も目立った。それが一転、オリンピックが始まってみると、オリンピック報道の時間は、

一気にポジティブワードに変換された。

 

 言葉が人に与える影響はこうも違うものかと感じる。

「●●選手、凄い。本当に大変だったと思うけれど、良く乗り切った。

感動しました!ありがとう。●●選手のこんなところが素晴らしかった!」

「悔しいですね。後少しだったと思いますがいかがでしょうか。仕方ない面もありますが、悔しいです。次回のパリでは必ずリベンジしたいです」

このポジティブで完結される言葉のシャワーは、見ているこちらまで、”頑張ろう”

と思えるものだった。

 

 この言葉のマジックは、事業運営においても多いに活用できるのではないかと感じる。仕事を進めていく中では、「なんでできないのか?」「こんなことはしてはいけない」「こういう形で進めないとだめではないか」といった、追い詰める質問や投げかけを見かけることがしばしばある。

 いわゆる「ネガティブワード」である。問題提起をするために、あえてできていないことをあげるという場面もあるかもしれないが、ネガティブワードが続くと、その場の雰囲気も悪くなる。

 

 逆に、職場でポジティブな声掛けだけをするようにしたらどう変わるのだろうか?

オリンピックの場合は、選手の競技する姿に感動して思わず、感嘆の声が出るのだけれど、逆転の発想で、まずポジティブな言葉だけを発してみる。

 

 それは自分にも、同僚や後輩、部下に対しても。職場のメンバーみんなが、ポジティブな言葉だけを使い、メンバーの良いところを見つけ、それをお互い讃えあい、感謝しあうことに徹したら、職場の雰囲気はどう変わるだろうか?!

 

 私は仕事がら、問題提起をすることが癖になり、ある時期なんでもクリティカル(批判的)に捉えがちな時期があった。理想を持ち、現状とのギャップを捉えて、提示することはコンサルの職人としては重要な視点ではあるが、人との関わりにおいてはストレスが増すだけであった。

 

 特に、自分ひとりではなく、複数のスタッフと一緒に仕事をするようになると、問題の提示は必ずしもプラスに働かない。物事の事象に対して問題を整理することは有効であるが、人に賛同してもらい、協力してもらう必要があるときには、問題提起はうまく機能しないことを身をもって感じている。

 

 それよりも、自分の不安や心配を話、それがなぜか?自分がどうしたいのか何を目指したいのか?ということの真摯に話すことの方がよっぽど相手が聞く耳を持ってくれた。自分の心配や不安の背景にある感情と向き合うことで、最後はポジティブな前向き感情を伝えられることができる。

 相手もそのポジティブな感情を受け入れてくれると、自然と感謝の言葉が出てくるという経験をした。その背景にあるのは、何とかしたい。自分の全力をもってやり切りたいという前向きな感情である。これはオリンピック選手が自身の競技を振り返る時と似ている。

 

 事業運営においては、事業の中身をブラッシュアップしていくことは大切である。一方で、人との関係性を前向きにとらえ、メンバーがそれぞれの力を発揮できるポジティブな職場づくりも大切だろう。今はイノベーションを起こせていなくても、ポジティブな会話を続けることで、驚くアイディアが出てくるかもしれない。

 

 ネガティブな言葉が交わされる職場では決して、ワクワクドキドキする面白いアイディアは出てこない。事業の中身を考える以上に、職場のポジティブな風土づくりは大切なのかもしれないとオリンピックの余韻に浸りながら感じた。